二つの要素
僕は、普段主に絵画制作を仕事にしています。特に、ドローイング(引っ掻いて描く)
での制作が多いです。ドローイングをしていて、常に思う事は、二つの要素のバランス
の大切さです。それは、「考える」要素と、「感じる」要素です。考える要素ばかり
で絵を描くと、とても味気ない作品になってしまいます。また、直感を中心とした「感
じる」要素ばかりで描いても、絵は成立しません。やはり、この相反する二つの要素、
言い換えれば、右脳的要素と、左脳的要素がうまくバランスをとったときに、説得力の
ある表現ができます。
考える要素の強い「コンセプチャルアート」でもなく、感じる要素の強い「ニューペイ
ンティング」でもない、より新しいスタイルのアートが必要なんだと思います。
このことは、アートに限らず、いろいろな分野でも言える気がします。東洋的な、「全
体の流れを、直感でとらえる、女性的な感性」、西洋的な「部分的な局所を、観察によっ
てとらえる男性的な感性」。直感と科学、どちらも、そこに素晴らしい長所と、それに
比例する短所があるんじゃないかな?
医学に関していえば、一方では、科学療法のような、部分的に物事をとらえた西洋医学。
他方では、民間療法や、食事療法などの、全体の流れで物事をとらえた東洋医学。どちら
も、やはり長所と短所があるような気がします。また、それぞれがそれぞれを認めず、対
立しているというのが今の現状ではないでしょうか?現代の数々の難病、癌、エイズ、精
神病等に対抗するには、西洋的な医学の長所と、東洋的な医学の長所を結集しないと、な
かなか太刀打ち、克服できないのでは?
西洋的な科学と、東洋的な霊感の共存する、ここ「日本」という国は、そういった意味で
非常にユニークかつ可能性に満ちた位置にあるのではないでしょうか?
これは、ぼくが「日本」生まれだからという「自惚れ」だけではない気がします。でも、
どちらかと言うと、「日本」は、限りなく男性的な要素の強い、処女性の国だと思います。
だから、女性と、男性が惹かれ合うように、日本とアメリカは、相性がいいんじゃないか
な?
芸術も、医学も、思想も、この二つの性質が結婚して、新しい価値観による新しい時代が
到来するのは、そんなに遠い未来ではない気がします。
2005年12月25日 加藤 慶記