「アート収穫祭」に関して
「あなたの日本人としてのアイデンティティーは何か」。
この言葉は海外でアートの話をした時によく言われることです。
「日本には、素晴らしい伝統文化がありますが、それをどのように自分流のものとして
昇華させて、それを自己表現するのか」ということを問いかけられているような気がします。
21世紀を迎えて20年近くの年月が過ぎようとしておりますが、
利便性を追求して
利潤のみを追求することが、過ちであったこともわかってきました。これは、日本だけ
ではなく、世界全体にもいえることで物質偏重による「精神性」の欠落の問題かと思います。
欧米化する生活様式が普及することで、日本の伝統文化を育んできた「四季折々の
季節感」も弱められてきました。日本人には、季節の移り変わりをデリケートに反応する
繊細さが備わっていました。「雨」を表現するにも小雨、春雨、氷雨、時雨・・・数十もの
言葉があります。それが、現代では英語的なrainだけで終えてしまうようになって
きたようなきがします。年中ブロッコリーとrain的な生活には、季節感はなく、「侘び」
「さび」も感じられません。現代の私たち日本人は、繊細な感覚が麻痺しているかもしれません。
「アート収穫祭」のコンセプトは、
日本の伝統文化そのものを復興させるのではなく、また、伝統的に受け継がれてきた慣習
や技法な
どの「形」にとらわれるのではなく、自分自身の目で伝統文化に触れて、それを
感じて、それを自分流に昇華させていくこと、大切なものは「精神性」です。
それを収穫したものとして発表する試験的な試みの発表の展示です。
それぞれの作家さんごとのテーマで日本の伝統文化を再認識していただいて、それを
自己表現されたものとして創作することです。
「古きに新しきを交うれば、古きもまた新しきも、ともに珍しきなり。これ、まことの花
なるべし。」世阿弥「花鏡」より
日本の季節ごとの伝統の営み、それは、生活の中で行われたものが基本となっております。
今年の9月9日・10月17日(旧暦の9月9日)は、平安から江戸時代まで、めでたい9の日
「陽」が
揃うことで、「重陽」という名のもとで、非常に縁起の良い日とされていました。菊をシン
ボルとして、「菊の節句」として、「長寿と繁栄の祈願」や「五穀豊穣の収穫への感謝」を祝うこと
が日本中でおこなわれておりました。 その伝統にあやかることで、「収穫祭」として、今回の
展示
は
おこないます。
企画 慈性通修