今回の個展のタイトルは「狂気のファンタジー」です。これはスペインの哲学者ミゲル・デ・ウナムーノ氏の
著作集「ドン・キホーテとサンチョの生涯」の一文から引用させて頂きました。それは私の美に対する姿勢
と大変共鳴するところがあるからです。 抜粋しますと「彼は美しい狂気のファンタジーに満たされ、そしてた
だ
美であるものだけが真理であると信じた。そして彼はそのことをきわめて生きいきとした信仰をもって、
つまり次つぎと行為を産み出してゆく信仰をもって信じたので、自分の狂気が暗示することを実地に移そうと
決意したのであり、純粋に信ずることによってそれを真実のものとしたのである。」 氏の言う狂気とは「精神の
苛酷きわまりない暴君である論理に対して広い心で反抗し、理由なく常規を逸することなのである。この汝の
祖国おいて狂人と思われている人の多くは、理由や動機や魂胆があって常規を逸するのであって、実は狂人
では
ない。彼らは抜け目のないくせものでないにしても、まぎれもなく低能なのである。狂気、それも真の狂気
こそ、
いまわれわれに大いに欠けているものであるが、おそらくそれは、われわれ一人ひとりの感受性を窒息
さ
せてしまっている常識というペストからわれわれを癒してくれるものなのである。」
ウナムーノ著作集2「ドン・キホーテとサンチョの生涯」
アンセルモ・マタイス/佐々木 孝 訳 p.31 p.121