梅花美月展

繋ぐII~Tsunagu in Nagoya ~

4月8日(木)〜25(日)(月火水休)

この度、K Art Studio企画、梅花美月展を開催できることに感謝いたします。K Art Studio
では、茨城県日立市の「詩穂音」と合同企画で行われた『4人展』、その後『宇宙派展』に
出展し、個展は今回初めての開催となります。私の作品の主なものは、私が住んでいる茨城
県常陸大宮市特産の「西ノ内和紙」の原料を使用し、和紙を漉くところから始まります。緑
系の作品が多くなったきっかけは2011年3月11日に起こった東日本大震災でした。震災によ
って家や建物が壊れ流され何もなくなってしまった絶望的な状況の中、気付けば草や木は何
事もなかったかのように力強く生き生きと緑を増やしていく。 目前に広がるその景色は私に
とって希望の色に思えたのです。

今、地球全体がコロナ禍ではありますが、この先には必ず希望があると信じ、緑をベースに
した新作を制作しました。また、作家として昨年20周年を迎え、8月に「詩穂音」にて個展を
開催した際に制作した、日立市が舞台になっている小説『煙突のある街』をモチーフにした
作品も、この度一緒に出展いたします。

個展のタイトルでもある『繋ぐ』は、「K Art Studio」と「詩穂音」との繋がり、そしてアー
トを通して人と人、心と心が繋がっていくことをテーマにしています。名古屋と茨城、距離
はあれどこの展覧会が何かしら「繋ぐ」ことの一助になることを願っております。

梅花美月 記



希望の灯火を消すことはない。

オンラインに慣れてしまうと、実際にその場へ向かうことの意味を失ってしまう気がする。
だからこそ我々は、その場へ行って、実際に会う意義を見出すべきなのだ。茨城から名古屋、
名古屋から茨城へ。都会と呼ばれる東京も大阪を介さないのであれば、その他の場所を
「地方」と呼ぶ必然はあるまい。その「場」が繋がることに、真理が生まれる。異なる場所
の人々が繋がると、始めに生じる違和感と摩擦は次第に理解と調和へ転換する。このパラダ
イムシフトを経験することによって、人は幾つになっても育っていく。人間は、学ばなけれ
ばならない宿命にある。他の場所の人間を排除する暇など、今だからこそ尚更ない筈だ。
それでなくとも新世界秩序により、世界中に溢れている企業によって、何処へ行っても
アメリカにいるような気がしてしまう。 人間が一人一人異なるように、その場にある個性を
失ってはならない。梅花美月は主に茨城で活動しているが、東京、小田原、兵庫、岩手 、
静岡 などの場所の壁に作品かけたことがある。私が見たのは東京の展覧会であり、結構前
のことである。今、眼の前にある作品を見ると、何よりも心が惹かれるのは、複雑に入り
混じる色彩である。この微細な色彩の変化を可能にしているのは、梅花自らが漉く和紙の力
であろう、同じ色彩を置いても、和紙の凸凹によって異なる表情を浮かべる。和紙の繊維に
絵具が自然に入り込み、独特の造形を生み出している処もある。一枚の画面に三色程度しか
使用していないにも関わらず、色は重なったり単独であったりして、多彩な感情を見せる。
光が当たる角度によって、その感情は更に魅力を増す。梅花は多く使用する緑に希望を込めて
いること自体、梅花の作品は何時の時代でも不滅に輝き続ける。我々は希望を失ってはなら
ない。困難であればあるほど、希望を創出していくべきなのだ。今回の展覧会で、単に梅花の
作品が茨城から名古屋へ移動するだけではない。ギャラリーと梅花のファン、その場に居合わ
せた者達、その様子をオンラインで見ている人達と、多角的な心が動いていく。すると、 オン
ラインでの繋がりを再発見する機運が齎される。体面が前提であっても、オンラインのみで繋
がることが可能なのである。それは何故か。着実な信頼関係が保たれればいいのではないか。
オンラインを乗り越えた信頼関係を、築けばいいのではだろうか。この展覧会が、新しい
展示方法の起爆剤になることを願って止まない。これから更に酷い時代になろうとしても、
我々は心を繋ぎ、 希望の灯火を消すことは出来ないのだ。

(宮田徹也|日本近代美術思想史研究)




加藤慶&梅花美月対談
2021年4月11日
名古屋⇔日立
梅花美月展2021記録映像

 


 

尚、今回の個展は、個人宅へのDM発送は行っておりませんので、予めご了承ください。